architect:Takeshi Kobayashi  photographer:Shigeyanagi・etc


 東京都中野区に親世帯の住まいを建て替えて、地下1階、地上3階と4つの階層を持つ2世帯住宅を計画した。計画地は北側に面した前面道路以外三方を隣家で囲まれており、81坪という大きなボリュームの都市型住宅をどのようにして豊かな空間にする事が出来るか、改めて考えた建物である。
 普通に考えれば南側に少しでも空地(庭)を設け採光、通風を確保するプランが想定できるが、南側は隣家に囲まれている状況であり、完全2世帯住宅という条件から下階の世帯は日中から日影になる隣家の背面を望みながら生活する事が容易に予想できた。2世帯を縦に分割するプランも考えられるが、それでは縦動線が増える事と敷地に対して平面的LDK空間が狭くなる。立体的にLDKを構築する事も考えたが、親世帯の今後を考えると最善とは言えない。
 やはり階ごとに世帯を分割するのが今回は最善である。幸い北側高度斜線の規制がある地域で、最上階は開放的な眺望を確保できる事が確認出来たので、親世帯はエレベーターを設ける事により最上階だけで生活が完結出来る様にして、下階を子世帯中心としたゾーニングに行き着いた。それにより2世帯共、接地階の玄関を広くして、ポーチ・ビルトインガレージもゆったりと配置する事が出来ている。
 また勝手に命名しているFresnel(フレネル)とはフランスの物理学者の事で、「光は、屈折率が異なる物質間の界面に入射すると、一部は反射し、一部は透過(屈折)する。」この現象を数式にしたのがフレネルである。少し分かりづらい表現なので水やガラスなどに光が入射した時の変化をイメージされるのが分かりやすいと思う。私はこのフレネルからインスピレーションを受け、光の深度を感じるライトウェル(光井戸)を設ける事により、この計画に豊かな空間を創る事が出来るのではないかと考えた。

 敷地形状から建物の外形は約10mの四角形状となる。南北に奥行が深い建物は中央部分がどうしても暗く、風抜けの悪い場所となるので、2.73m角(4.5帖)分のライトウェルを建物の中央にポッカリ穴の開いた配置とした。自己の建物に囲まれたライトウェルはプライバシーが保たれ、採光、通風に大きな役割を持つ装置となる。また、中央に外部を取り込む事により、2世帯共LDKは最大限、南面する事が可能になっている。特に最上階の眺望を生かすには最良である。
 初めて建て主とお逢いした時、親世帯の現在のお住まいは、すべての窓から緑が見える所が気に入っているという。子世帯もなるべく緑が多いモダンな空間が好きだと言う。このライトウェルには求心的な役割も持たせ、1階に高木を配し、中間階ではプランターボックスを吊り下げ、緑豊かな空間になるように施している。天空から3層に渡り降り注ぐ光は下階に行くにつれて外壁に反射や減退をし、緑の葉を透過して心地良い木漏れ日空間になる事を狙っている。また、階ごとに分節された完全2世帯住宅であるが、マンションの様な強い分断は一つ屋根の下に2世帯が住むというプログラムから寂しさを感じる為、やはり世帯間の気配は少し感じるのが良いと思った。計画したライトウェルを介して少しだけ立体的に各世帯の視線が行き交い、アプローチやガレージの気配も感じられる、緩やかな繋がりが楽しさや安心も創出している。
 都市型における住宅では法的条件、要求条件をまとめ上げるだけでは豊かな空間にならないと感じている。もう一歩先の想像力や忍耐が必要であり、今回はこのライトウェルにより、親世帯は開放的な空と緑、子世帯は緑の多いモダンな空間を獲得する事が出来、程よい距離感の2世帯住宅になったと自負している。

専用住宅(2世帯住宅)
RC+W造・B1/F3
延床:269.62u
東京都中野区

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