architect:Takeshi Kobayashi  photographer:Takuya Shimosato


 オーディオ・楽器演奏・自転車に自動車。多趣味な夫から妻と家族へ贈られた家である。
 敷地は目黒区柿の木坂にあり幹線道路から離れた静かな場所である。更地の状態で東側前面道路以外、隣家に囲まれた条件である事が良く判る。しかも、前面道路はそれほど広くなく、前面道路反対側の隣地群は2.5mほど地盤が高く建物1層分計画地を見降ろされる場所であった。また、計画地側に並ぶ家々が道路いっぱいに建っており、より密集した街並みをつくり出している。しかし、都内の住宅敷地面積としては広い計画地で、黙っていたら不動産屋が2筆に分けてしまう広さである。そのような敷地にプライバシーが守られ光を感じる家を計画した。

 計画地を見て、より良い街並みに寄与するべく、なるべく道路からセットバックして建物を配置したいと感じていた。そして、次に感じていたのが南側隣家の状況である。東西に長い計画地は南側建物の日影影響を直接受けてしまうので単純に南に庭を配置して採光を得ようとすると、諸条件の建物ボリュームと前面道路からセットバック配置を考えると小さな庭しか確保できず、毎日、間近に日の当たらない隣家の背中の壁を眺めて生活する事になる事が想像できた。この様な明るくしたい南側が暗く感じるのは避けるべきと感じていた。
 そこで南側隣家の日影図を季節ごと数パターンの受影面高さを設定して作成し、その結果から南側隣家の影響を受けない様に北側リビング配置として、中庭、吹き抜け、窓位置のバランスを操作しながら断面構成を考えた。また素材選定を光が回遊するようなイメージでディフューズ(拡散)の効果を考慮して直射光と反射光のコントロールも試みている。
 光は照らされる対象物により明るさの感じ方が大きく変わる。中庭の壁と吹き抜け傾斜天井は白くディフューズ(拡散)を強くして一番受光するリビング北側壁は程良い反射とする為、石貼を施している。フローリングや造り付け家具などもマット(反射の弱い)ウォールナットとして光の濃淡をコントロールした。

 私が日頃考えている光のボリューム(強弱)は、日本の伝統的な民家は深い軒により光の濃淡をつくり出しているのと、谷崎潤一郎が陰翳礼讃で暗い所ではより光を感じると書かれているように、必要以上に均一に光を求めると落ち着かない空間になってしまう事から、この建物では北側に光のボリュームを強くする事により光の濃淡をつくりだしている。
 そして、この建物の1階外周部窓は設計的には風の導入による窓を主とし、光の導入は中庭に面した窓からと設定している事により隣家から覗かれないプライバシーが守られたLDK空間となっている他、リビングとダイニングキッチンが程良い距離感(中庭越しに繋がる)で中庭を中心に平面的に回遊動線も構築され、外部(自然)がより豊かに強く屋内と繋がる事も狙っている。
 また、元々住まわれていた大田区の戸建ては地上3階地下1階と多層な建物で、小さな部屋がたくさんあっても結局、家族が集まるリビングに物が集まってしまう不満があった為、限られた建築面積から除外できる中庭で視覚的に広さを感じさせる事によりリビングに面して4帖以上のスタディールーム兼用の収納を配置したのと、逆説的に1・2階が吹き抜けを介して立体的に繋がることにより分節度合いを和らげ、家族の気配を感じながら家の中を広々と使える様にしている。

 夫婦とも柔軟な発想を許容してくれる施主であった為、私が考える事もすばやく理解し、応答しあえたのは良い家づくりの過程であった。そして竣工後、1年ほど経って撮影させて戴いたが奥様の笑顔と心地良い光が私へのプレゼントであった。

専用住宅
W造・F2
延床:185.35u
東京都目黒区

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