architect:Takeshi Kobayashi  photographer:Tadao Kato・etc


 土地には、そこに住まい使われてきた長い時間の歴史があり、その歴史から蓄積された想いに真摯に応える事が設計者として土地に対する礼儀である。
 東京都杉並区の閑静な住宅地。約17m×22mの四角い110坪の計画地には南側にクライアント自宅と北側にアパートの計2棟が建っていた。元々は服飾デザイナーの先代が開いたオートクチュールのアトリエ名称であった「ぷりずむ」が、このアパート名に引き継がれていて今回、賃貸併用住宅1棟に建て替わる事により三代目の「ぷりずむ」となる計画である。
 「ぷりずむ」とは光を分散、屈折、反射させるための透明な媒質でできた多面体であり、ピンクフロイドのアルバム(The Dark Side Of The Moon)のジャケットデザインを連想するのは私だけだろうか?話が少し脱線したが、今回の計画には当初から「ぷりずむ」から連想された光を操作する何かを中心的にしたいと考えていた。
 敷地環境は南道路と東道路による角地で、南道路は車の往来は極めて激しく、また、近年南道路反対側に3階建て集合住宅が建設され、計画地へのプライバシーが侵されているのが伺える環境であった。
 このような想いや条件から延床125坪の建物中央に三間角(9坪)のオーナー住戸専用中庭を、光を操作し取り込む空間として設け、あえて自宅を敷地北側に配置してプライバシーの確保と「ぷりずむ」への想いに応える事にした。上空から建物を望むと「ロの字」型の配置である。さらに屋上には約20帖のルーフバルコニーを設けて低層住宅地ならではの開放感が得られるようになっており、立体的にオーナー住戸リビングとも繋がる配慮をしている。このルーフバルコニーは椅子に座る視線高さでは隣地からのプライバシーが守られる工夫も施した。

 また、クライアントは賃貸空間にも新たな挑戦を施したいという想いがあった為、接地している住戸は全て道路からプライベートなアプローチを有し独立性の高い間取りとしており、全ての2階賃貸住戸はロフトが設置され天井高さが高い立体空間としている。貸し方の挑戦としてもワンルーム主体の賃貸住戸であるが1住戸だけメゾネット型27坪の住戸としファミリー、グループ、シェア対応が出来る様にしている。
 クライアントとの対話からデザインは少し和風テイストが良いと決まり、クライアントが切望されたガチャポンプ仕様の井戸も昔あった井戸付近に新たに掘って設置し、白壁の建物に黒く塗装したレッドシダー竪格子がアクセントとなる外観とした。一部差し色として赤い木塀を中庭部に施したのはイロハモミジの紅葉に対峙させる事も狙っている。そして、中庭に面する高窓を設けたオーナー住戸のリビング吹き抜け(天井高さ5m)は高くて明る過ぎるくらいの空間となったが、フルオープンの窓にしている事により、今後中庭の樹木(モミジ、シラカシ、ヒメシャラなど)が鬱蒼と茂り屋内外が心地良く繋がる空間となるのを期待している。
 こうして3代目「ぷりずむ」は「prism.tokyo(ぷりずむ.東京)」として生まれ変わり、新たな歴史を創り始めたのである。

共同住宅
W造・F2
延床:415.32u
東京都杉並区

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