architect:Takeshi Kobayashi  photographer:Tadao Kato


 横浜は港北区の高台にある住宅の増改築である。計画建物の2階からは横浜の中心部であるランドマークタワーやみなとみらいが望め、多くの緑にも恵まれた良好な環境である。
 実はこの設計の依頼は施主ではなく施主の母との出逢いから始まっている。母の住む実家の裏の家が売りに出され、当初は2つの家を繋げたいという相談からであった。購入した家に息子夫婦に住んでもらい2世帯住宅に出来ると良いというのである。法的にも技術的にも2棟を繋ぐ事は可能であったが、打ち合わせが進むにつれ屋外で双方の家にアプローチ出来れば良いという事になった。
前記した様に恵まれた環境にあった家であるが、1階部分の日当たりが南にある実家の影によって暗さと狭さが強調された建物であった為、計画中はリビングの配置を1階にするか2階にするかで大きく悩んだ。私は滞在時間の長いリビングは2階の見晴らしの良い空間にリビングを勧めていたが、高台だけあって計画地にたどり着くまで坂道や階段で毎日かなり登る動作をするので家に入ったらすぐ寛げる1階にリビングが良いと施主の強い希望により決定された。設計は、この1階空間を如何に快適な空間にするかに終始している。

 まず、耐震補強も兼ねて玄関部分を増築してリビング空間を1階の中でも日当たりの良いゾーンに配置し直し、南面する部分の2階床を持ち上げて吹き抜けを作り、良好な採光と風景が享受出来る大きな窓を設置して外部との繋がりを確保した。さらにキッチンを中心とした回遊プランで使いやすい動線を構築した。畳を敷いた書斎コーナー、大容量造付け収納棚、ベンチ付の階段などが空間に変化を与え心地よく感じる様に設えている。
 工事は内装仕上げを丸ごと撤去して建物の劣化状況を確認する事から始めた。築28年の建物は予想以上に傷んでおり、健全な体(建物)にするには大規模な外科手術(修繕工事)が必要になり、執刀医(大工)にも技術が要求される仕事となった。
 日本は今、人口減少により空き家問題がクローズアップされるようになってきている。既存の建物が、全て良好な建物であれば良いが実際は多くの問題を抱えた家がほとんどである。建築家として大きな展開で打開出来るアイデアがあれば良いが、問題はそう簡単ではない。まず、このような増改築や修繕を一つずつ丁寧に行い、永く愛される建物にする事からこの問題に向き合いたいと思っている。

専用住宅
W造・F2
延床:86.32u
神奈川県横浜市

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