architect:Takeshi Kobayashi  photographer:Shunsuke Maruyama


 M’s House。母(Mother)の為の家。娘(Musume)の想いが込められた家。施主の名字もMから始まる。 すべての頭文字の「M」から設計者の私はこの家をM’s Houseと呼んでいる。
 東京下町(東尾久)。目の前の幹線道路には都電が走る。きっと少し前までは良い意味で東京の下町らしい雑多な賑わいを見せていた地域だと思われるが、今では前面道路に舎人ライナーのモノレールが整備され東京スカイツリーも近くに見える。近代的でちょっと凶暴な構造物や施設が挿入された下町風情はなんとも不思議な感情を抱かせる。そのような敷地に母と娘2人の為の住まいを設計した。
 近代的に変化し始めている地域であるが、クライアントとの対話から風土が感じられる建物にしたいと思い、職人たちの技による素材(テクスチャー)で構成し、シンプルなフォルムとしている。このスクエアなフォルムは看板建築(商店長屋の正面だけ四角い建物)へのオマージュであるが、この建物は屋根が屋上デッキコートになっており実用も兼ねている。視線の先にはスカイツリーを眺める事ができ、季節によっては花火も見える場所である。

 1階は高齢の母のトイレ付部屋と居間を続き間にして生活範囲をコンパクトにまとめている。前記した様に前面道路は車の往来が激しい幹線道路の為、開放させるには相応しく無い環境であり高架にモノレールも走っている。プライバシーの確保も考慮すべき条件であり、採光は嵌め殺しのハイサイド窓で確保し、障子付の南北窓で通風を制御している。さらに母の部屋は天井高さを約3.2m確保する事により光が家の奥まで届く構成とした。家の1階の中央を仕切る事の出来る建具は引き込み戸と竪繁格子のしつらえを用いて職人の技が光る納まりとした。2階は娘の部屋を配置し大きな収納も設けている。
 匂いに敏感な母の為に自然素材で構成された屋内は落ち着きのある空間となり、柔らかな光の屈折がいつまでも2人を優しく包む家が出来た。

専用住宅
W造・F2
延床:80.31u
東京都荒川区

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